カーボンニュートラルな社会の実現に向けて、アンモニア燃料が注目されていることはこれまでの記事で解説してきました。
そしてアンモニア燃料がなかなか普及しない課題の一つとしてハンドリング、すなわち安全性の課題があります。アンモニアを燃料として利用する場合、燃え切らなかったアンモニアの処理や、アンモニアの貯蔵方法において安全性を担保することはアンモニアが普及するためには解決しなければならない大きな壁となります。
今回は、アンモニアの許容濃度(基準値)について解説していきます。
この記事を読めば、
「燃え切らなかったアンモニアをどれ程度の濃度に抑えたら良いか?」
また「アンモニアを実際に取り扱う作業場や職場における安全基準はどの程度なら良いか?」
と疑問に対する答えとしての目安とすることができます。
アンモニアを取り扱う場合の安全対策グッズについては下記の記事で紹介しています。
アンモニアNH3が人体に危険な理由
アンモニアが危険な理由は、アンモニアの化学的な特徴に起因しています。
アンモニアは腐食性と強い刺激臭、水に溶けやすく、発熱性を有するといった特徴を持つため、人体に高濃度で暴露してしまった場合は不快感や結膜・角膜の障害、呼吸器への影響を及ぼす危険性があります。
具体的な例としては、目や皮膚、口腔や気道などの湿った粘膜が高濃度のアンモニアにさらされた場合、粘膜の水分と即座に反応して水酸化アンモニウムと強い熱を発生します。この時、アンモニアには腐食性もあるため、目や皮膚、口腔や気道などが損傷したり火傷してしまうなどの危険が想定されます。
より詳しく知りたい方は、SDSと呼ばれる安全データシートに、危険性または有害性のおそれがある化学物質を含む製品の詳細な取り扱い方法や危険性が記載された文書があるのでご参考にしてみてはいかがでしょうか?
昭和化学株式会社:安全データシート(SDS) アンモニア水28%
↓アンモニアの危険性を作業場や職場に掲示しておきたい場合は、化学標識がおすすめです!
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アンモニアの許容濃度(基準値)はいくつなのか?
国内:日本産業衛生学会が提唱する許容濃度は25ppm
日本においては、日本産業衛生学会がアンモニアをはじめとする有害物質について許容濃度を示しています。
日本産業学会が提唱しているアンモニアの許容濃度は25ppmとなっています。さらに短時間の場合は、35ppm以下としています。
アメリカ:米国産業衛生専門家会議(ACGIH)も同様に25ppmを基準
アメリカでは、ACGIHと呼ばれる組織が、作業環境許容濃度(TLV)について、
・TLV-TWA (1日 8時間、1 週40 時間の時間荷重平均濃度)で25ppm
・TLV-STEL (1日の作業のどの時間においても、超えてはならない15 分間TWA)で35ppm
と定めています。
アンモニアNH3の急性曝露ガイドラインレベル(AEGL)も基準になる
急性曝露ガイドラインレベル(AEGL)とは、有害性物質の公衆に対する閾値濃度のことを指し、米AEGL開発諮問委員会によって策定されています。気体あるいは揮発性物質を主体とした急性毒性物質を対象とした、大気中に放出された有害物質の短期曝露による健康被害に対する対応を構築する根拠となる指針として策定されたものになるのでこちらも参考になるかと思います。
具体的にどれくらいの濃度で、どの程度の時間さらされていると、どの程度の健康被害が想定されるかが、3段階のAEGLと呼ばれるレベルで示されているため、アンモニアの危険性を語るには有用な材料と言えます。

*AEGLの基準
AEGL1 | 人が不快に感じるレベル:身体の障害にはならず、一時的で曝露を中止すると回復するレベル。 |
AEGL2 | 障害レベル:公衆に避難能力の欠如や不可逆的あるいは重篤な長期影響の増大が生ずる |
AEGL3 | 致死レベル:公衆の生命が脅かされる健康影響、すなわち死亡の増加が生ずる |
まとめ:アンモニアの大気中許容濃度の一つの基準は25ppm
まとめると、アンモニアの大気中の許容濃度は25ppmとしておけば、重大なケガや障害につながる可能性は低いと考えて良さそうです。
職場や作業場における安全対策の目安として捉えて頂ければ幸いです。
↓アンモニアを取り扱う職場や作業場における安全対策グッズについても下記の記事で紹介しているのでぜひご参考にしてみてください。
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